梶井基次郎の感性って、この文庫全集を読んでみて、習作「太郎と街」が原点なんじゃないかなって思いました。感性のアンテナをピンと立てて、楽しげに街を歩く青年。それはのちに「檸檬」の屈折、「冬の日」の悲愴、「冬の蝿」の諧謔へとアンテナの方向を変えながら続いていく。
梶井の晩年29歳の時に書かれた「闇の絵巻」は、病気が悪化し、数百メートルの道のりを歩くのもやっとなのに、鮮烈な発見、驚きに満ちています。その根底には、不思議な生命の明るさがあるように思います。
桜の樹の下には・・・おすすめ度
★★★★☆
”桜の樹の下に屍体が埋まっている”というフレーズは
小説やマンガにこれでもかと引用されていますが
その部分だけが先に入っていた私は、初めてこの本を読んだ時
自分の想像していたものが大分違っていた事を知りました。
これは桜の花の美しさを最大級に讃える表現だったのですね。
著者は結核を患い若くして亡くなられています。
その為か、この全集に収められている作品は完成してないものも多いです。
また作品に登場する主人公達はみな胸を患っているので
この人は自分の作品の主人公にそのまま自分を投影しているのだろうと思っていたのですが、
「あとがき」に梶井基次郎について書かれている宇野千代さんの作品の抜粋部分が載っていて
それによると”梶井基次郎という人は自己を語らず、感情も出さず、
手紙にも自分の思う事を書いてきた事はなかった”という事で
その対照的な印象が不思議に思えました。
まさに夢のコラボです。
おすすめ度 ★★★★★
とても面白いじゃないですか
。従来の伝統を引き継ぎつつ、バランスがうまくとれてます。
買って良かったと思います。