タイトルである「死者の奢り」「飼育」はもちろん、それ以外の四篇も見事に引きこまれました。憤り、悲しみ、絶望、空虚といった複雑な人間の感情がそれぞれ見事に織り込まれており、人間のちょっとした仕草や表情や情景に対してたくみな比喩を用いています。例えば「汗」ひとつを表すにしてもとてもねちっこいし、いやらしい。身体に関する描写は嫌というほど細かく頭にまとわりついてくる感じです。そしてそれぞれの読後にスッキリといった気持ちはとてもじゃないけどおきない。じわじわと内面深くに響いてくる。
全体を通じて、戦争やアメリカ兵に翻弄されるストーリーが主体ですが、それは著者自身の体験であり、同時に何かしら屈辱を感じさせる重たい雰囲気は、今ではうかがえない敗戦にうちひしがれた社会とそこに生きる人々を見事に体現しているものと思われます。
全六編全てが面白い。おすすめ度
★★★★★
芥川賞の候補作品になった『死者の奢り』と、芥川賞受賞作品である『飼育』を含む短編集。
初版は一九五十年代に出版されたということもあって言葉遣いが少々古いところもあるが、全く気にならないレベル。
一つ一つの作品は短編で総ページ数もそんなに多くないが、とにかく読み応えが凄い。
全体的に重く、静か。
読み終えた後に爽やかな気持ちになった作品は一つとして無いが、「嘘っぽさ」も全く無い。
これを学生の頃に書いたなんてほんと凄いとしか言いようがない。
著者自身の思想は嫌いという人の中にも、この作品自体は面白いと感じる人はたくさんいるんじゃないかなあと思う。読まず嫌いは勿体無い。
濃密な短編集おすすめ度
★★★★☆
佳作6作の短編集。
短編集だし、本自体も厚くないし、一気に読めるかと思いきや、
のっけの「死者の奢り」から大学の地下室で標本死体の移し変えのバイトの話でズーン。
タイル張りの黴臭い地下室の水槽にアルコール漬けの死体がプカプカ浮かんでる
様子を読んだ瞬間に気持ちが一気にドーンと暗くなったけど、生や死、虚無感や徒労感が
鮮明に描かれていて、特に最後の「喉にこみあげて来る、膨れきった厚ぼったい感情」とか
の表現は詩的で秀逸だと思った。
戦後十年頃に書かれた作品群なので、どの作品にも戦争の色は濃く出ています。
作品のテーマが虚無感、侮蔑、裏切り、傍観、誇り、欺瞞などどれも濃密で、
1作品読み終わるごとに、ふーっと溜息が出て、読み終わるまでに結構時間がかかりました。
すばらしい
おすすめ度 ★★★★★
非常に素晴らしい一品だと思います
!いや~、ほんと(・∀・)イイ!久々に良い買いモンをしました。
ご参考になれば幸いです。大変お勧めですよ!!